靴を大事にできる人に見てほしい5つのお話

ごきげんよう

年初から何本かエントリを書いたのだが、年頭一発目に書いた靴を大事にする話(3万円以上する靴を大切にする費用対効果の話http://d.hatena.ne.jp/grand_bishop/20150105/1420444165)がいきなり沢山のブクマやいいね!をいただいてしまいもう今年のブログはこれでいいんじゃないかと思ってきた(笑)

このエントリの後、メッセージやコメントを沢山もらったのだが、非常に個人的な話のつもりで書いたので驚くばかりである。

ただ、最近のトラックバックなどの通知を見るとあのエントリを読んでちゃんとした靴を買ったり、靴磨きを改めてしたりと自分の足元を見直してくれた人が居てくれるようで一靴好きとしてはそういう人が増えてくれたことは嬉しい限りだ。

さて、沢山いただいた反響の中で結構な数があったのが、僕の持ってる靴の写真に過剰に反応してもらい「いい靴=成り上がり」という皮肉も多くいただいた。

これ自体は文脈の捉え方としては非常に正しいし、僕自身は「本格靴が幸運を運んだ」と本気で信じてはいるが、展開としてオリジナリティがあるものではないし「成功」や「成り上がり」のアイコンとしてよく様々なストーリーに靴は登場する。

今日は僕が大好きな靴がアイコンに使われている様々な物語のシーンについて書いてみようと思う。

■靴で成り上がった人

ウルフオブウォールストリート

まず最初は証券会社を興しウォール街で一躍成り上がったジョーダンベルフォートの自叙伝を映画化したウルフオブウォールストリートですが、ジョーダン率いるストラットン・オークモント社躍進のきっかけになり、莫大な金をジョーダン達にもたらすのは「スティーブ・マデン」というセレブ御用達の靴ブランドのIPO(新規株式公開)です。
僕も年に10回くらい上場しないんですか?といろんな人に言われますが、「どうしてそう思うのですか?」と聞くと、皆なにやら小難しいことを言ってくれます。
僕の中ではIPOの説明としてはディカプリオ演じるジョーダンベルフォートが映画の中で言うこの言葉が最もわかり易いですね。
IPOというのは使い道が分からないほどお金が増えること」
これくらいはっきり口説いてくれないと僕は頭良くないから理解できませんね。
まぁだとしても慣れない人間がそんな金持ってもロクなことにならないのもこのお話の通りでしょうからまったくその気にはなりませんが。

天国と地獄

黒澤明監督の天国と地獄も靴を通じて成り上がろうとするドラマです。
ドラマは靴メーカー「ナショナルシューズ」の権藤取締役の自宅に「息子を誘拐した」と誘拐犯から電話がかかってくるところから始まります。
この権藤取締役。金を工面し、自社株を買い集め、次の取締役会でクーデターをしようと画策していたのですが、そんな折の誘拐事件。結局誘拐されたのは息子ではなく人違い。
誘拐されたのは運転手の息子だったのですが、結局紆余曲折ありながらもその子を救う為身代金を支払いクーデターも失敗して破産します。
うちは靴屋ではありませんが、長く商売していると僕にたまにそういうことを吹き込んでくる危なっかしい人も居ますね(笑)
僕はそういう時いつもこの天国と地獄を思い出しますね。僕も子供や若者に弱いので、よからぬことを考えると多分こういう感じになるんだろうなとなかなか示唆に富むお話です。
でも、この権藤さん。最後は裸一貫また小さな靴メーカーを始めます。そこはちょっとうらやましいかもです。

■靴を成功のアイコンにする人

ウォールストリート

やはりこの人を外すことはできないでしょう。
マイケルダグラス扮するゴードンゲッコーです。

僕も今の商売を始めた頃にたまたま投資銀行やファンドのオフィスに何度かお邪魔させていただいたことがあったのですが、(前回の靴を大事にするエントリにも書きましたね。)一番印象深かったのは城山ガーデンヒルズの個室のオフィス、昼間っからレザーソールの靴を履いたままの足をデスクに放り投げて、パソコン見ながら電話しているガイジンさんです。それを見て、ゲッコーや!ゲッコーがおるで!と謎にテンション上がったものです。

まぁそんな金融系の人に影響を与えたと言われる「ウォール街」の続編の「ウォールストリート」では、インサイダーで長らく監獄にぶち込まれていたゴードンゲッコーが出所後、舌先三寸で娘の口座に退避させていた資金を奪い取り(元々ゲッコーの金ですがw)投資の世界に復活した時のシーンに靴を買い求めるシーンがあります。
まさに復活の象徴として靴を買うシーンがあてられているのですがおそらくロンドンのクロケット&ジョーンズで、フィッティングをしているシーンです。
これがまたカッコいい。もちろんフィッティングの後のセリフは電話をしながらこれです。「4足もらおうか」。
僕は手が後ろにまわるようなことは絶対にしないと固く誓ってはおりますが、万が一捕まった場合、出所して仕事をする際には靴屋に行こうと思います。
そして言います「1足でいいです。とりあえず。」

■靴があるから仕事ができる人

セックスアンドザシティ

僕が靴にお金をかけ大事にし始めたのは、会社を立ち上げてすぐくらいからもう辛すぎて出社拒否になりかけ、毎日玄関に行くのを楽しくするためだった。と前のエントリで言いましたが、同じような話はあるもので、言わずと知れたSATCです。
主人公のサラジェシカパーカー演じるコラムニストのキャリーは大の靴好きという設定で、靴にはお金を惜しみません。
特にマノロラニクがお気に入りです。女性の靴は男性のそれと違いどんなに高級でも耐久性に限界があるし、そもそも高級=丈夫さとかいうベクトルではないので、その儚さったら男性の高級靴好きなんぞとは比べられないほど刹那的です。

でも、いいじゃないですか。
キャリーのセリフにすべて集約されています。

「シングルウーマンの道は平坦ではない。だから、歩くのが楽しくなる靴が必要なのだ」

男の道だって平坦ではありませんが、その凸凹の大きさと期間の短い中での勝負になる点から言って楽しくやり過ごす為に女性にはコスパとか通り越した劇薬的な靴が必要になるのは仕方のないことなのかもしれません。

ルブタンやジミーチュウが最近メンズラインも展開し始めていますが、女性並みの度胸と勝負へのストイックさを身に着けるにはこういうレディース靴のメンズラインもよいのかもしれません。

■靴の神様は昔から勝負の神様

さて、靴はいつだって僕が真剣に仕事に人生に向き合う時にそれが上手くいくようにサポートしてくれた重要なアイテムでした。
そして、ここ一番という時、きっと靴の神様がいて助けてくれたのでしょう。

最期のお話は、シェークスピアヘンリー五世です。最大の見せ場、イングランド軍7000名がフランス軍2万名をアウェーで打ち破るアジャンクールの戦いの前のヘンリー5世の大演説には靴の守護聖人「聖クリスピン」が出てきます。
靴屋だった守護聖人聖クリスピンの祝日に劣勢な環境の中、ヘンリー5世は「今日わたしと共に血を流す者はわしの兄弟なんだから。どんな卑賤な者も今日で以て貴紳(きしん)と同列になる。イギリスで今寝ておる貴紳連は、後日聖クリスピン祭に、我々と一緒に戦った誰れかにその話を聞けば、きっと今日ここにいなかったのを残念がり、男がすたったように思うだろう。」と兵士を煽ります。
今にも死にかけそうな劣勢にいる仲間に向かって「ごめんなぁ、こんな事にまきこんで。。」じゃなくて「お前これまじでラッキーやで」と声をかけるのです。そして結果を出したものには生まれ育ちを問わず尊敬されると説く。
そして士気上がるイングランド軍は本当にフランス軍を打ち破ってしまう。まさに有史以来最大の靴のご利益(笑)です。

靴のつま先を見ながら、毎日苦しい思いをしている僕らもこれが不幸だと思わず、むしろ手柄の立て所。ラッキーな境遇と思えばまたアジンコートの戦いのような奇跡を靴の守護聖人はサポートしてくれるかもしれませんね。
常に万全の状態で戦えるとは限らない僕たちにとっては身分を問わず助けてくれるなら誰でも味方。だから靴をちゃんと磨いて持ち場で今日も勝負時に備えることにしますよ。

さて、今日は即席で僕が好きな靴が出てくる印象的なお話を紹介しただけで終わりましたが、また機会があれば靴の話をしようと思います。まったくもって趣味の世界ですが。

では