スタイルを捨てるというスタイル
僕が革靴が趣味だというのは以前もブログに何度か書いたのですが、
「僕は革靴が趣味で靴を大切にしていて、それによっていろんな出会いや良いことがあったと自分では思っている。」
という文脈に対して、
「何か少しでも見返りを期待しながらやることは真実の愛ではない。今すぐその靴を全部捨てるべし」とありがたいコメントをしてくれている人がいて、なるほどなぁと思いました。
何かを好きだと言いながらそこから得るものを意識した時点でそれは大いなる欺瞞というわけです。
僕は何しろ一度買った靴を底を修理しながら10年以上履くようななケチですので無駄遣いが嫌いですし、全ては消費ではなく投資でリターンを考えてしまう人間なのでなるほどそういう発想はありませんでした。
物事に対する「真実の愛」について議論するつもりはないのですが、僕としては自分の中に自然と愛が湧き上がってくるまで何もしないより、見返りを求めていろいろなことにチャレンジしてみる方が得だよねという適当な宗派です。
今日はその辺の話を少し。
靴より見返りを期待して始めた事としては僕はゴルフが当てはまります。
僕は最初のキャリアがメーカー系のエンジニアでしたから、例えば広告代理店とか、マスコミとか、商社とかいわゆるイケイケ風のお仕事とはまったく対極のところで最初のビジネスマンとしてのスタイルを作りました。
自分が今のWeb関係の会社の立ち上げをする中で初めて生き物としての広告代理店や商社のイケイケの大人というのを見たわけです。
今はだいぶ変わりましたが、10年前などはまだまだ元気な昔ながらのアドマンとか商社マンとかが居ましたし、そういうオジサンを見るとたまに明らかにゴルフ焼けで真っ黒な人がいるわけです。
これが、ギョーカイなのか。。単純に驚きながらも、天邪鬼に
「よーし、俺は真面目を売りにしていこう。限られた時間でバリューを出す。」とか
「60分の打ち合わせで70分ゴルフの話をするようなのを仕事だと思ってる奴らを滅ぼしてやる!」とか
「今シリコンバレーの最前線ではTシャツ短パンでソースコードを書くのがなんちゃらかんちゃら〜」
といろいろ思って、ゴルフなんて興味ねえし、むしろ絶対やらないぞ!と思っていました。
しばらくそんな調子だったのですが、ある人を見て考え直しまして、ゴルフをするようになりました。
■ある意味プロゴルファーとの出会い
これももう10年くらい前の話なのですが、ある病院の院長先生に仕事の依頼を受けました。
他の病院の先生から紹介を受けて院長先生にプレゼンをして、「いいね。じゃあそれをお願いするよ。」という話になりました。
さて、仕事にとりかかろうとすると、細かい話や請求等はここへ行ってほしいと名刺を渡されました。
病院というのは、医療法人とは別に事務仕事をする法人などを持ってたりするのでそういうものかと思ったのですが、雑居ビルの一室に行くとそこにはパット練習をしているオジサンが居ました。
「???」
聞くとこのオジサンは、大手広告代理店出身の方で、個人代理店としていくつかのクライアントの広告や印刷物などを所謂ハウスエージェンシーのように請け負ってるらしいのです。
そして本人曰く、全てのクライアントがゴルフ友達だそうで、まるで社長さんのゴルフの相手が仕事のような人でした。
打ち合わせをしようとしても、まるでツアープロのように一週間のうち4〜5日ゴルフに行っていて居ないのです。
僕は小さな事務所にぶらさがったカレンダーのうち赤い丸がついていない日を選んで打ち合わせの日を決め、次回の打ち合わせは3週間後ということになりました。
彼は様々な企業や法人に食い込んでいるらしくオーナーや幹部とのゴルフの予定をまず最優先にどんどん入れるので半年先まで予定でギッシリなのです。
多分稼げないプロゴルファーより多くラウンドし、多くの収入を(ビジネスで)得ているようでした。
というかもはやこの人はある意味プロゴルファーです。
僕は圧倒されました。「ゴルフばっかりやって仕事らしい仕事もしない人間は認めないぞ!」と思ってたのですが、僕が見たのは、最終ゴールであるはずの「仕事を獲る」という目的を達成する為、月曜日から金曜日までティーグラウンドに立つプロの姿でした。
「自分は自分のちっぽけなスタイルにしがみついて本来のゴールであるはずの『仕事を獲る事』にストイックになれてないのではないか?」
「自分はお客さんを選べる身分なのか?100人の見込み顧客が居たとして、ゴルフが三度の飯より好きな3人の社長は自分のスタイルに合わないから『客が古い』と見ないフリをするのか?」
「ゴルフだけ(語弊はあるかもしれないがw)で仕事が回るということは、ここにはそれなりの規模のマーケットがあるんではないのか?それを見ないフリをするのか?」
いろいろな思いが頭をよぎりました。
次回の打ち合わせのアポイントメントをお願いし、小さな事務所を出ようとしたとき、僕はプロに呼び止められました。
「おい!君!ちょっと待って。送ってってあげるよ。それにこれ、あげるよ。」
新品のゴルフボールをひょいと投げられました。
「ありがとうございます。。」
プロの運転するベンツのワゴンで送ってもらう道すがら
(僕が間違っていた。ゴルフやらないとな。。)
と自分のちっぽけなスタイルを捨てることにしたのでした。
冷たい大雨の日のことでした。(今考えるとだから多分その日は事務所に居たんでしょうね。)
■ゴルフをして気づいたこと
僕は早速その週末、上野に行きゴルフセットをカードの分割払いで買いました。
僕の周りにはゴルフをする人は居なかったので、教えてくれる人もおらず、仕方なく自宅近くのレッスンに通いました。
なんとかカタチらしいものになりかけてからは、お客さんなどに誘われてもおつきあいが出来る程度にはなりました。
もちろんそれで仕事になるようなことにはなりませんが、一つ大きなことをに気付きました。
これまで気づかなかった視点で物事が見れるようになったことです。
例えば、スポーツビジネス、例えばリゾートビジネス、例えばエグゼクティブやシニアマーケット。
やったことがなかった時にはデータとイメージだけで考えていた事が、自分事として感じ取れるようになりました。
あともう一つ気づいたことがあります。
このスポーツ。いくらやっても全然上手くならない(笑)
自分が何かが無性に好きという気持ちもまた大切ですが、それ以外のことを理解できない趣向として自分の視野から外してしまうよりは、何か見返りを求めてでも何か新しいことにチャレンジしてみることは大切だなと思います。
社会人になるととかく時間とお金に制限が付いてしまうからこそ、新しいことを始めるのは億劫になりがちです。
誰かが夢中になって時間とお金を割いているところにはマーケットがあるし、そうさせるだけの何か仕組みがあるはずですからそれを「理解できないこと」として狭い範囲に生きるより、一度熱心にやってみた上で何か得られるものはないかを貪欲に探ることは大事なんではないかと思います。
別にビジネス本を読んだからってお金が降ってくるわけでもないですし、少なくとも僕が見た「ある意味プロゴルファー」は、横文字いっぱいのビジネス書を電車で読んでる意識高いおっさんより自分の力で沢山稼いでいる様に見えました。
それに人間としても単純に興味がわきますよね。なんだこいつ?と。
ちょっと前に大ヒットしたドラマに「モテキ」というのがあり、音楽好きのモテない主人公が、なにもしてないのに女性にモテモテになる。というコメディでした。
主人公は音楽好きで仕事も音楽ライター、女性にはからっきし縁がなかったはずなのに、自分の好きな趣味が微妙に絡みながらどんどん美女が寄ってくるという「ファンタジー」です。
これがお話しとして面白いのは、「自分がなんとなく興味があることをなんとなくやってるだけで得をしまくる」というのが非現実的だからです。
現実の世界で人にモテる人は、見返りを求めてでも最初興味のない新しいことにもチャレンジしていき、「面白さ」を発見していくような人なんじゃないでしょうか。
僕モテたことないからしりませんが(笑)
なんか分かったような分からない話になりましたが、今日はとりあえず台風でお客様に誘われていたゴルフは流れてしまいました。
なので代わりのアウトプットが何か出せるように今日も持ち場で頑張ることにします。
ブログ書いてる場合じゃなかったですね。
では