CFTやタスクフォースは男(女)を上げるチャンス

ごきげんよう。お昼休みのひと時です。
さて、お友達のブランドコンサルティングを手掛けるインサイトフォースの山口さんがとても勉強になる記事をアップしてくれていました。

B2B営業を成果につなぐブランド戦略 最終回:
ブランディングとセールスの連動、「CMO待望論」より必要なこと (1/2)
http://marketing.itmedia.co.jp/mm/articles/1606/13/news045.html

ブランド戦略を絵に描いた餅にしない!生々しいCFT運営のコツ
https://note.mu/blogucci/n/nef48e9ea9585

※CFTとはクロスファンクショナルチームのことで部門を横断してメンバーを集めて課題に取り組むチームのことです。
詳しくはこちら http://gms.globis.co.jp/dic/00781.php

ブランド戦略というテーマから論じられていますが、実際にご自身が各企業に入り込んでお仕事をされている山口さんらしい全社課題に対して「実になる」結果を出す為の組織論としてもとても的を射ていると思います。

ちなみに田端さんがツッコミを入れていた議論には僕もリアルタイムで参加していたのですが、CFTというのは実は「なかなかうまく行かないやり方」として語られることもよくあります。
今回の山口さんの記事のよいところは(ポジショントークだとしても)それを超えて「やはりCFTだ!」と言ったことだと思います。

経営ないしは経営に近い視点からのCFTの有効性や運営については山口さんに聞いてもらうとして、僕があえてこの話に蛇足と知りつつ何か言うとすれば、CFTや、タスクフォースと言われるプロジェクトへの参加は部門の現場社員としてはチャンスだから死ぬ気で参加した方がいいと思うよという話です。

■CFTは部門ではお遊びだと言われる?

僕は会社員時代とあるメーカーのCFTにいくつも参加していたのですが、ここで多くのことを学びました。
でも、CFTの難しい面も沢山見ました。
僕が参加したいくつかのCFTの中で一番思い出に残っているのは、とある画期的な新システムを既存商品に標準装備することにより得られるデータを如何に各部門で活用するか?というCFTでした。

まずそもそもスタートから無茶苦茶でした。よく考えてみたらそりゃそうで、データを飛ばす装置を標準装備することをトップ決定してから活用をCFTで考えるのです。
初回から大荒れなわけです。まぁ各部門が頭を抱えたり、自分都合の話をしたり、そもそも論になったりと喧々諤々でした。

僕はというと、実はこのCFT。部門でババ抜きのババを引いたような感じで行かされたものでした。
一番立場が弱く、なんでもハイハイと行きたがる僕を部門長が生贄のように差し出したという経緯だったのです。

そもそもCFTは各部門で通常ミッションと別に編成されるものなので、専従ではありません。だから部門の本流では「仕事」とは認めてもらえない空気感がありました。
直属上司との評価面談シートなどでも、どや顔でメインの期中のアウトプットに「CFTがんばりました!」みたいに書くと上司にげんこつで報いられる感じなので、空気を読んで「その他の成果」の欄に「CFTに行きました。まる」みたいに書く感じでした。

やはり部門の数字や目標にコミットしているラインマネージャーからすると、部下のうちエース級をCFTに引き抜かれたり、若手が他の部門と交流して染まられると使いにくいから嫌なんですよね。
うん。器の大小はともかく部門を預かる責任者ならそういう気持ちになるのは仕方ない。(笑)
だから、部門ではCFTは空気的に冷ややかな感じになりがちです。

いやいや、経営層肝入りのCFTなんだから、チャンスじゃねーの?
というのは日本企業の入り組んだ政治ゲームを甘く見ています。意識の高さだけで生き残れたら苦労しません。
特に経営に近いCFTは設置を主導した人の子飼いや部門内のスパイと後々思われる可能性がある為、本気のエリートコースの人は様子見をすることも多いにアリだと思います。

■それでもCFTは学びのチャンス

僕はそれでもCFTやタスクフォースはチャンスがあればなんとか入るべきだと思います。
ここで重要なのは部門での立場を担保したままうまく参加することです。
「部門の代弁者として僕がぶちかまして来てやりますよ!」と、若手の族議員を部門では装って参加するとか、みんなが忙しいと思うので僕が、、、と押付けられたふりをするとか。そういうのがいいでしょう。

もちろん実際にCFTとしてワークするときには部門員としての専門家としての視点から、全社としてのあるべき姿に貢献できるように全力を出します。ちゃんと組成されたCFTであればスタッフ部門からはエース級が入ってることも多いですし、外部から戦略コンサルタントなどがファシリテイターや取りまとめに入って来ることもあります。
そういう人達はビジネスパーソンとして有能な場合も大いにありますので部門内でタコツボみたいな体育会系縦社会ばかりをやってるより彼らとの仕事は勉強になり、視野が広がります。給料は上がりませんが。

■部門へはCFTの空気を単純に持ち帰らない

これはやり方ではありますが、うまく回っているCFTはとても仕事として面白くもあります。
自分が普段部門の中で向き合っている閉じた世界とは違い、様々な部門と会社全体のデザインについて意識できるからです。ここで若いと褒められているうちになんだか鼻持ちならない態度になったり、意識が上がり過ぎて部門に帰って同僚やひどいと上司に説教をたれる猛者が出たりします。
CFTではもちろん方向性等を部門の代表として部内へ持ち帰り、実務レベルで浸透させるエバンジェリストとしての役割も期待されているのでやれと言われたからやった振る舞いですが、まぁ、、、大体嫌われます。

大日本帝国陸軍大臣にして終戦詔勅に同意して陸軍を武装解除した阿南惟幾終戦時に切腹自害)は、最期まで本土決戦を強行に主張していると陸軍内でも皆が思っていたからこそ、「あの阿南大将が納得したのなら。。」と陸軍が暴発せずに従ったという説があるそうです。こういうのを「腹芸」と言うわけですが、まさにこの腹芸なしには部門にCFTの成果はインストールできません。
「部門の利害を最も強硬に主張していると部門内に思われておく」ことはとても大事です。

■CFT参加中は部門で今まで以上に働く!

結局のところ、CFT参加はビジネスパーソン個人として勉強になる経験ではあるものの、常にすべての会社のCFTが経営の後ろ盾をもち健全に運営される保証がない以上、CFTの参加で認められ経営企画などに取り立てられるなんて夢を見てたのに、結果は「本業もおろそかに経営改革ゴッコに参加して遊んでた。」という烙印を部門で押されることなんていくらでもあります。
いやぁ美しいですねぇ。ニッポンの大企業!

それでもCFTは参加するのですから、自分で保険を掛けるしかありません。
つまり「CFTに参加中は部門で通常ミッションの遂行する為目の色を変えて働く!」
これしかありません。

■CFTは経営の疑似体験?

会社というのは様々な利害が一つになった組織で、追い求めるKPIや成果の方向性が部門によって異なるのが当たり前です。むしろガバナンスの視点では異なっていることが必要なのです。
これを超えて会社の成長に向かって自分の専門分野を生かしながら全体を俯瞰して最適解を作っていくCFTの作業というのは経営の手順そのものとも言えるでしょう。
こんな機会がもし自分の仕事の中で見えたら何がなんでも掴んでおきたいものです。若ければ尚更です。
しかし、CFTが設置されるということ自体が組織上で深刻な政治的な機能不全が横たわっているのは自明です。
故にべき論で片づけられない問題を直視して、組織内の有象無象の思惑も泳ぎ切り生きてCFTの成果を見ることができたらきっと企業内に居たとしてもマーケットで通用するビジネスパーソンになっていると思います。

まぁ、僕はいくつかのCFTを経て起業に参加してしまいましたので、有象無象を泳ぎ切れなかったクチです。
でもCFTに飛び込んだ経験は、自分が会社を創る上での組織作りや、大企業の組織論理を理解した営業活動など、ベンチャーをやるようになってからもとても役に立っています。

というわけで来るべきCFT参加のチャンスを虎視眈々と狙いながらやるべきことは決まってますね。
今日も持ち場でがんばりましょう。