星野リゾートにみるサービスがブランドになるとき

さて、皆さんは今日も持ち場で頑張られているだろうか?
持ち場で毎日死にそうな思いをしている我々を癒してくれるものといったらなんといっても夏休みのリゾートだ。

で、例によっておすすめは沖縄である。

が、先日、僕の大好きな沖縄、しかも最上級の海の美しさを誇る八重山諸島と世界に誇るおもてなしリゾート星野リゾートのリゾナーレという最強タッグに物言いがついた。

例によってあのお方である。

日本はおこちゃまの国 - Chikirinの日記
http://d.hatena.ne.jp/Chikirin/20140706

で、、これに関して、私をはじめ沖縄好きの会社役員数人で昨夜緊急委員会、、、にかこつけた飲み会が開かれた。

当初から沖縄をお勧めしないとまで言ってのけたちきりん憎しで統一されるはずの同一ポジションの人間たちのはずなのだが、

なんと、その中の一人の委員から
小浜島ゾナーレは好き嫌いが出るのは致し方ない。」
「俺は、はいむるぶし(同じく小浜島にある三井不動産が手掛けるリゾート施設)の方が好きだ。カートで自由に動けるし、独特の開放感がある。」
「リゾナーレはスタッフの対応は良いが、施設間の移動を含め何から何までスタッフを呼んだりしたりしないといけなくてプライベートビーチの使い勝手を含め僕は合わなかった。」

という裏切り者がいきなり出てきてしまったのだ。

まじか。。。落胆しかけたその時、「ただ、、」と彼はつづけた。

「ただ、、星野のスタッフのサービスレベルは俺は本当にすごいなと思った。これは施設というレベルではない。実は5泊の予定でリゾナー小浜島に泊まったのだが、2泊したところで、俺は、はいむるぶしに帰りたく(彼は小浜の定宿がはいむるぶしなので「帰る」という表現を使う)なってしまったんだ。その話をついスタッフにしてしまってね。そしたら、はいむるぶしが翌日からだと泊まれるというのを教えてくれたんだ。迷ったけど宿を移ることにしてね。そしたら自分たちのホテルの宿泊予約をキャンセルしてくれて。翌日なんとリゾナーレの車ではいむるぶしまで送ってくれて『よかったですね!』と言ってくれた。俺ははいむるぶしが好きだが、人にはリゾナー小浜島を勧めると思う。」

彼の名誉の為に言うが、彼はいわゆる強面で旅先でわがままを振りかざすような成金タイプでは決してなく、見た目も性格も非常に穏やかな紳士である。
小さな子供を連れた家族旅行で揉め事を起こす人間では決してない。
間違っても体よく追い出されたクレーマーなんてことはあり得ないのだ。

僕らはその話を聞いて、少し黙ってしまった。

短い沈黙の後、もう一人の男が、口を開いた。

「心底星野リゾートという会社はすごいな。彼らがバブル期に作られた箱モノに命を吹き込み再生できる理由の片鱗を垣間見た気がする。今日俺の中でリゾナー小浜島は伝説になった。」

ノードストロームやザッポスにはこのようなとんでもないカスタマーサービスの伝説がたくさんある。

人は言う、ノードストロームでは、ホームレスの女性が店内に入っても販売員が笑顔で暖かく出迎え試着をすすめたという。その様子を神父が見かけ、そのことを説教先の各地で伝えたことでノードストロームのサービスは伝説となった。(ノードストローム・ウェイ―絶対にノーとは言わない百貨店 (日経ビジネス人文庫)

人は言う、ザッポスでは、ある女性が病気の祖母の為に買った靴の返品が、祖母が靴を試す前に亡くなってしまった為葬式等で遅れてしまった。その事情をザッポスに言ったところ返品はザッポスから取りに行きますと言ってくれた上で献花がメッセージカードと共に届いた。そしてそのことを女性はブログに書いてザッポスは伝説となった。(顧客が熱狂するネット靴店 ザッポス伝説―アマゾンを震撼させたサービスはいかに生まれたか

そもそも星野はリゾナーレブランドをはじめとして場所と箱が固定された施設を買い取り再生して地域と共に成長してきたのだ。

合理的な思考とやらは、一見よさそうに見えるし、確かに強力な力を持っている。
例えば、世界を席巻したSPAなどがそうだ。センスの良い欧州でデザインし、人件費の安い中国で製造し、もっとも高く売れる日本で売る。といったことをすればすごい競争力にはなる。

でもなんでもそれで解決するわけではない。リゾートなどはいい例だ。八重山の海、モルジブの空気、ニースのラグジュアリー感みたいなことを言っても物理的な制限があるし、そもそもんなもんを作っても多分行ってみると大して楽しくないものになっているだろう。

人の体験は、人が作る。人はそれに感動し、付加価値を払う。
ただ、サービスの付加価値というのは、体験した人がそれが良いという人も居れば、それのどこが良いのかわからない。という人も出る。

仕方のないことだが、かといって定量的に比較可能な尺度で世界中を見比べて評価していても肝心の利用する側の心の安住はない。

真のサービスブランドというのは比較したうえで生まれてくる最上であるという保証ではない。比較できない「もてなし」を提供できるかどうかがサービスのブランド化をする鍵なのだ。

僕はモルジブも行ったことがあるけど、間違いなく沖縄と星野のサービスはグローバルブランドだ。僕達はお勧めする。特に小さな子供が居る大人のファミリー。何もお外国と同じ尺度で競う必要はない。

もちろん沖縄を愛するおっさんのポジショントークであることをここに宣言しておくが、星野リゾートとは僕自身も集まった仲間達もなんら利害はない。

どうでもいいけど、最大の問題は夏休みを沖縄ですごしたいけど今年は持ち場を離れられそうにないことだよ。
まぁ、頑張ってればもしかすると奇跡がおきるかもしれない。まずは沖縄の青い海を夢見て持ち場でがんばるとしよう。