素人が大金を手にするサクセスストーリーは産業が壊滅する予兆

プロの為の道具が急速に安く、扱いやすくなるとき、先駆者的な素人が一次的に思いのほか稼いだりして、注目を集める。
しかし、そのサクセスストーリーはその産業が壊滅する予兆だとすれば見方は変わるんじゃないかな?

熟練の技術と専用設備が必要だったアパレルは20年前にマックとアドビのソフト群により格段にデザインと製品化のハードルが下がり、オリジナルデザインTシャツと限定生産による裏原宿ブームを作り上げ、APEのNIGOを億万長者にした。

しかし、テクノロジーの革新は進みつづけ、サプライチェーンや生産の効率化がSPAを生み出し、今ではオリジナルデザインTシャツですらユニクロカスタマイズの登場で、究極まで無駄を絞り込まれたSPAとアプリの結婚という結果を生み出し、すべてのプロセスがスマートに無駄なく最適化され、中間価値は消滅させられた。

同じように、今はHIKAKINがユーチューブで動画を配信する素人として大金を稼いだと話題になっているようだが、これも動画制作から配信までのプロしか扱えなかった道具やインフラが急速に安価になった結果生み出された一時的なひずみを捕まえた破滅への行進の過程に現れる一時的な成功者の一人に過ぎない。

この動画コンテンツの流れも、いずれアパレルで起こった裏原宿ブームのように、最適化が進み、HIKAKINが稼ぐギャラの何百倍、何千倍もの中間価値とそれで食べていた人たちの仕事を巻き込んで消滅させてしまうだろう。
もちろん、HIKAKINもいずれ消ゆく運命にある。
NIGOが40億の負債を抱えブランドを売り、渋谷や原宿のアパレル文化の勢いがみるみる衰えて行くように。

これは本来は新たな雇用を生み出すはずのテクノロジーの進化スピードに人間の稼ぐ能力、消費する能力が置いてけぼりにされ同期して成長しないといういわゆる「グレートデカップリング」そのものだ。

製造業だって、中国に製造業の雇用が奪われたわけではない。既に中国ですら製造業の雇用は減退しているのだ。
人間がロボットにどんどん置き換えられているだけ。

グーグルはロボット企業を買いあさり、アマゾンはドロイドで商品配達をしようとしている。

シリコンバレーのオタクちゃんたちは自分が宇宙に行ける日の為にがんばってるのであって、僕ら地上で些細な幸せを望む人々の雇用のことなど考えていないよ。

個人が活躍できる時代が来ただの、フリーで稼ぐだの、組織に縛られない生き方だのと吹聴する人たちもいるけど、僕は逆だと思ってる。これからはチームの、組織の時代じゃないか?

ドワンゴ川上会長はこれから機械の帝国に対抗するには、人間が集まり、多様性の中で、「なんだか論理的に説明しにくいもの」を生み出して人間にしかわからない価値を作って戦わないとと仰っているけど、全ての産業においてそういう取り組みをしないと僕らの居場所なんて何処にも無いんじゃないかな。

なんか今日のエントリーはツイートに入り切らなかった思い付き話を拡張したから、いつにもまして内容が薄っぺらくなっちゃったね。申し訳ない。

いけ好かなくても、何を言ってるか理解できなくても人間と一緒に仕事ができてるうちはまだましなのだから、今日も僕らは人間にしかわからない価値を作るために持ち場で一生懸命人間同士がんばるとしましょう。